今回は、前回に引き続き、空気汚染のうち「室内空気汚染」についてご紹介いたします。
住宅、学校、公共の建物、事務室、病院、地下施設、交通手段などといった、室内空間での空気汚染についてです。
現代人は一日の大半を室内で過ごすので、室内空気の汚染は人体に大きな影響を及ぼします。
1. 室内空気汚染物質の種類
厚生労働省は、13物質について室内濃度指針値を定めています(2018年5月24日「化学物質の室内濃度指針値」参照)。
その中でも特に生活に起因する可能性が高い化学物質と、それらが含まれる材料は以下の通りです。
〇ホルムアルデヒド・・・合板、家具接着剤、ビニル壁紙、パーティクルボード、フローリング、断熱材など
〇トルエン・・・・油性ニス、樹脂系接着剤、ワックス溶剤、可塑剤など
〇キシレン・・・・油性ペイント、樹脂塗料、ワックス溶剤、可塑剤
〇パラジクロロベンゼン・・・・消臭剤、芳香剤、防虫剤など
〇エチルベンゼン・・・・接着剤や塗料の溶剤および希釈剤
〇スチレン・・・・樹脂塗料等に含まれる高分子化合物の原料
2. 室内空気汚染物質による健康影響
(1)シックハウス症候群
新築やリフォームした住宅に入居した人の、目がチカチカする、喉が痛い、めまいや吐き気、頭痛がする、などの「シックハウス症候群」が問題になっています。
その原因は、建材や家具、日用品などから発散するホルムアルデヒドやVOC(トルエン、キシレンその他)などの揮発性の有機化合物、防虫剤や殺虫剤、カビ・ダニなどと考えられています。
「シックハウス症候群」についてはまだ解明されていない部分もありますが、高気密の空間に長期間暮らしていると健康に有害な影響が出るおそれがあります。
よくある症状として、以下の訴えが多いと言われています。
〇目、鼻、のどの刺激、粘膜の乾燥
〇皮膚の赤み、かゆみ
〇疲労、頭痛、精神的疲労、集中力低下、めまい、吐き気
〇嗅覚、味覚の異常
(2)化学物質過敏症
「化学物質過敏症」は、室内に放散されるごく微量の化学物質に過敏に反応し、頭痛やめまい、集中力の低下などさまざまな過敏症状を引き起こして、通常の社会生活に支障が出ます。
「化学物質過敏症」として報告されている症候は多彩であり、
〇粘膜刺激症状(結膜炎、鼻炎、咽頭炎)
〇皮膚炎
〇気管支炎、喘息
〇循環器症状(動悸、不整脈)
〇消化器症状(胃腸症状)
〇自律神経障害(異常発汗)
〇精神症状(不眠、不安、うつ状態、記憶困難、集中困難、価値観や認識の変化)
〇中枢神経障害(けいれん)
〇頭痛、発熱、疲労感など
が同時にもしくは交互に出現するとされています。
3. 発生源対策
家具や備品など、原因と考えられるものが容易に移動できるものであれば、その室内から除去してしまうことが有効です。
また、壁紙などが疑われるなら張り替えが有効です。
建材や防蟻剤などが原因と推定された場合は、発生源の移動などによる除去は困難なので、各種吸着剤、分解剤、封じ込め剤や空気清浄機などの利用といった処置が必要になることがあります。
化学物質の吸着剤の利用や空気清浄機(脱臭機)の使用は比較的簡便ですが、その効果は製品によってばらつきがあります。
空気清浄機の場合は、粉じんなどを除去するタイプなのか、気体の化学物質を吸着したり、イオンクラスターのような分解するタイプなのか、対象を確認して使用する必要があります。
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